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人事労務重要用語

(5)会社側の抗弁(B)割増賃金に対応する定額手当の支給

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 (1)労基法と異なる計算方法による手当の支給

 労基法が規制しているのは、法37条に定める計算方法による一定額以上の時間外手当を支払うことだから、その規制に違反しない限りは、同条に定める方法による時間外手当の計算をする必要はない。例えば、割増賃金の算定の基礎に算入すべき賃金を除外していても割増率が高いために法の定める計算よりも高額の時間外手当になる場合には、法37条の規制に違反していないことになる。行政解釈も同様の立場である(昭24.1.28基収3947号)。

 (2)時間外労働に対して定額手当を支給する場合【割増賃金への充当】

 時間外労働等に対応する手当を他の賃金と明確に区別して定額で支払う場合には、当該手当額が労基法所定の計算額以上であるか否かを判定することが可能である。そうすると、支払われた定額の手当の額と労基法37条の方法によって計賃した割増賃金の額を比較して、前者が多額な場合には、同法37条違反の問題は生じない。後者の方が多額の場合には、手当の支払は一部のみの支払となり、同法37条に違反する限度で違法となり、その差額分が認容されることになる。(大阪地裁判昭63.10.26労判530号40頁・関西ソニ−販売事件)。
 但し、その定額手当が時間外手当に該当するか自体が、争われる場合も多く、重要な争点になる。判決文の中で、「明確な根拠、合理的な根拠」がある場合は、認められるとは言っているが、実際の判決で認める事例は例外的。 【就業規則での明確な明示、本人との合意が重視される】

 ■割増賃金の定額手当の有効性に関する裁判例
�@オンテック・サカイ創建事件(名古屋地裁H17.8.5:労判902)
 業務推進手当が、月45時間分の固定残業手当であるとの会社の主張に対し、裁判所は、賃金規定に明確に記載されているものとは到底認められないと、否定した。
�A岡部製作所事件(東京地裁H18.5.26【確定】:労判918)
 営業開発部長として、管理職手当11万円は、時間外残業代に代わるものとして支給されている意味合いもあると考えられる、として住宅手当、家族手当同様割増賃金算定の基礎賃金から除外した。【月11万円の管理職手当が時間外手当として支払済みとの主張(抗弁)がなかった様子】
�B日本アイティーアイ事件(東京地裁H9.7.28:労判724)
 基本給18万円、役職手当3万円、営業手当16万円程度を支給していた営業職課長らについて、時間外・休日勤務手当を支給しないことの代償措置の一面を有することが認められ、・・・割増賃金の額が、役職手当等の額を超える場合はその超過する金額を請求することはできるけれども、超えない場合は改めて割増賃金の請求をすることはできないというべきである。
 結論として、時間外勤務の存在を認める証拠がないとして、請求を棄却した。
�C育英舎事件
 学習塾の営業課長手当4万円の割増賃金への充当を認める事例。但し、労働者が会社の充当の抗弁を認めたケースであり、裁判所の判断とはいえない事例。
�Dモルガン・スタンレー・ジャパン(超過勤務手当)事件(東京地裁H17.10.19:労判905)
高額年俸基本給に割増賃金が含まれているという合意が存在したとして割増賃金の請求を棄却
�ET製作所事件(甲府地裁都留支部H16.8.18:労経速1879)
 外国人労働者の時給1100円には、割増賃金が支払われていることを認定した。
                           
 (3)時間外手当を基本給に祖み込んで支給する方法
 この場合には、時間外手当部分が基本給から明確に区別できるかが問題になる。
明確な区別をすることが可能であれば,前記(2)の場合と同様に取り扱えばよいことになる。○月15時間の時間外労働を見込んだ上で、その分の時間外手当を加えて基本給を決定したとの主張に対して、仮にそのような合意がなされたとしても基本給のうち時間外手当に当たる部分を明確に区分して合意し、かつ、労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことを合意した場合にのみ、その予定時間外手当分を当該月の時間外手当の一部又は全部とすることができると判示している。そのような区別がなされない場合には、上記の合意の主張は失当な主張となる。(最高裁第一小判昭63.7.14労判523号6頁・小里機材事件)
・基本給への組込支給において、明確な区別が認められるケースは例外的でほとんど無し。但し、主に深夜専門に従事する場合、深夜割増部分を含むことを認める裁判例は複数ある
  千代田ビル管財事件(東京地裁H18.7.26:労判)
  大虎運輸事件(大阪地裁H18.6.15:労判924)

 ■休憩時間が認められず(手待時間と評価)、その時間の割増賃金を認めた事例
  関西警備保障事件(大阪地裁H16.3.31労判876)
  互光建物管理事件(大阪地裁H17.3.11労判898)
  クアトロ(ガソリンスタンド)事件(東京地裁H17.11.11労判908)