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人事労務重要用語

有期労働契約の反復更新(契約社員の雇止め)

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 1990年代、パートタイマーや契約社員と呼ばれる有期労働者が大きく増加し、社会の不可欠の労働力となってきたことを背景に有期労働問題が法政策として取り上げられるようになりました。
 1998年の労働基準法改正では、改正事項には含まれませんでしたが、国会の附帯決議で「有期労働契約について、反復更新の実態、裁判例の動向等について専門的な調査研究を行う場を設け検討を進め、その結果に基づいて法令上の措置を含め必要な措置を講ずること」が求められ、これを受けて2000年9月に有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告が取りまとめられ、同年12月には労働基準局長通達として「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する指針」(基発779号)が発出されました。2003年改正では、労働基準法14条に有期労働契約に関する基準を定める根拠規程が設けられ、これに基づき同年10月には大臣告示として「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」が制定されました。旧通達レベルの指針が「努めるものとする」という規程だったことに対して、法律に基づく大臣告示で明確に義務づけられたのはかなりの進歩といえます。

【有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準】厚生労働省告示357号(平15.10.22)
(契約締結時の明示事項等)
第1条
1.使用者は、期間の満了後における労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。
2.前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。
3.使用者は、有期労働契約の締結後に前2項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。
第2条(雇止めの予告)
1.使用者は、有期労働契約(雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
第3条(雇止めの理由の明示)
1.前条の場合において、使用者、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2.有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
第4条(契約期間についての配慮)
1.使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

【雇止めに関する基準の内容】(通達平15.10.22)基発第1022001
ア 第1条関係
(ア)本条により明示しなければならないこととされる「更新の有無」及び「判断基準」内容は、有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要するものであること。
   例えば、「更新の有無」については、
   a 自動的に更新する
   b 更新する場合があり得る
   c 契約の更新はしない
  等を明示することが考えられるものであること。
  また、「判断の基準」については、
   a 契約期間満了時の業務量により判断する
   b 労働者の勤務成績、態度により判断する
   c 労働者の能力により判断する
   d 会社の経営状況により判断する
   e 従事している業務の進捗状況により判断する
   等を明示することが考えられるものであること。
(イ)なお、これらの事項については、トラブルを未然に防止する観点から、使用者から労働者に対して書面を交付することにより明示されることが望ましいものであること。
(ウ)本条第3項については、使用者が労働契約締結時に行った「更新の有無」及び「判断の基準」に係る意思表示の内容を変更する場合に、当該労働契約を締結した労働者に対して、速やかにその変更した意思表示の内容を明示しなければならないものであること。この場合、「更新の有無」及び「判断の基準」が該当労働契約の一部となっている場合には、その変更には当該労働者の同意を要するものであること。
イ 第2条関係
(ア)本条の対象となる有期労働契約は、
a 1年以下の契約期間の労働契約が更新又は反復更新され、当該労働契約を締結した使用者との雇用関係が初回の契約締結時から継続して通算1年を超える場合
b 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合であること。
(イ)なお、30日未満の契約期間の労働契約の更新を繰り返して1年超えた場合の雇止めに関しては、30日前までにその予告をするのが不可能な場合であっても、本条の趣旨に照らし、使用者はできる限り速やかにその予告をしなければならないものであること
ウ 第3条関係
  「更新しないこととする理由」及び「更新しなかった理由」は、契約期間の満了とは別の理由を明示することを要するものであること。
 例えば、
(ア)前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
(イ)契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
(ウ)担当していた業務が終了・中止したため
(エ)事業縮小のため
(オ)業務を遂行する能力が十分でないと認められるため
(カ)職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
 等を明示することが考えられるものであること。
エ 第4条関係
  本条における「労働契約の実態」とは、例えば、有期労働契約の反復更新を繰り返した後、雇止めをした場合であっても、裁判において当該雇止めをした場合であっても、業務の都合上、必然的に労働契約の期間が一定の期間に限定され、それ以上の長期の期間では契約を締結できないような実態を指すものであること。

この基準ができるまでは、有期労働契約(期間を定めて締結されている労働契約)について契約の更新・雇止め(不更新)に関して労働者の保護に欠けると考えられる実態も見られ、雇止めについて裁判で争われる事例も多く積み重ねられてきています。雇止めについて争われた裁判例の傾向について「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」によって分析されていますので、見ていきたいと思います。

 雇止めについて争われた裁判例を見ると、6つの判断要素を用いて当該契約関係の状況を総合的に判断しており、民法の原則どおり契約期間の満了により当然に契約関係が終了するものと判断した事案ばかりではなく、契約関係の終了に制約を加え、解雇に関する法理の類推適用等により雇止めの可否を判断し、結果として雇止めが認められなかった事案も少なくありません。また、裁判例について類型化を試みると、有期労働契約を4つのタイプに分けることができ、各タイプごとに判断要素に関する状況や雇止めの可否について一定の傾向が見られます。

【6つの判断要素】

 �@業務の客観的内容
  従事する仕事の種類・内容・勤務の形態(業務内容の恒常性・臨時性、業務内容についての
正社員との同一性の有無等)

 �A契約上の地位の性格
  契約上の地位の基幹性・臨時性(例えば、嘱託、非常勤講師等は地位の臨時性が認められる。)、
労働条件についての正社員との同一性の有無等

 �B当事者の主観的態様
  継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等(採用に際しての雇用契約の期間や、
更新ないし継続雇用の見込み等についての雇主側からの説明等)

 �C更新の手続・実態
  契約更新の状況(反復更新の有無・回数、勤続年数等)、契約更新時における手続の厳格性の
程度(更新手続の有無・時期・方法、更新の可否の判断方法等)

 �D他の労働者の更新状況
  同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等

 �Eその他
  有期労働契約を締結した経緯、勤続年数・年齢等の上限の設定等

【有期労働契約の4つのタイプ】

�@純粋有期契約タイプ
期間満了後も雇用関係が継続するものと期待することに合理性は認められないもの
<事案の特徴>
a)業務内容が臨時的な事案があるほか、臨時社員など契約上の地位が臨時的な事案が多い。
b)契約当事者が期間満了により契約関係が終了すると明確に認識している事案が多い。
c)更新の手続が厳格に行われている事案が多い。
d)同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例がある事案が多い。
<代表的な裁判例>
 亜細亜大学事件(東京地裁 昭63.11.25)
 継続雇用を期待させる使用者の言動がなかったこと、専任教員と非常勤講師との職務内容、責任、雇用条件の相違等の契約関係の実態を認定した上で、「以上のような諸事情を考慮すると、原・被告間の雇用契約は、20回更新されて21年間にわたったものの、それが期間の定めのないものに転化したとは認められないし、また、期間の定めの契約と異ならない状態で存在したとは認められず、期間満了後も雇用関係が継続すると期待することに合理性があるとも認められない」と判示したもの。
<雇止めの可否の判断>
期間満了により有期労働契約は当然に終了すると解され、雇止めは認められる。(雇止め「有効」)

�A実質無期契約タイプ
 期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約であると認められたもの
<事案の特徴>
a)業務内容が恒常的であり、更新手続が形式的な事案が多い。
b)雇用継続を期待させる使用者の言動が認められる事案が多い。
c)同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例がほとんどない事案が多い。
<代表的な裁判例>
 東芝柳町工場事件(最高裁一小 昭49.7.22)
 「実質において、当事者双方とも、期間は一応2ヶ月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、したがって、本件各労働契約は期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならない」と判示したもの。
<雇止めの可否の判断>
人員削減等のやむを得ない特段の事情がない限り雇止めは認められない。結果として雇止めが認められたケースはほとんどない。(雇止め「無効」)

�B期待保護(反復更新)タイプ
 雇用継続への合理的な期待が認められる契約であるとされ、その理由として相当程度の反復更新の実態が挙げられるもの
<事案の特徴>
a)業務内容が恒常的であり、更新回数が多い。
b)業務内容が正社員と同一でない事案、同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例がある事案がある。
<代表的な裁判例>
 日立メディコ事件(最高裁一小 昭61.12.4)
  「本件労働契約が期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきある。」としつつ、「柏工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば、解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。したがって、独立採算制がとられている柏工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても、それをもって不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。」と判示したもの。
<雇止めの可否の判断>
経済的事情による雇止めの事案で、正社員の整理解雇とは判断基準が異なるとの理由で結果として
雇止めを認めたケースがかなりみられる。
 業務量の縮小、商品生産の減少、製品の廃止、部門の閉鎖等ある程度予想される終了事由の有無により雇止めの有効、無効の判断が分かれる。実務的に問題となる場合はほとんどこのケースと言える。(雇止めの有効・無効はケースバイケースで異なる)

 a)雇止めが認められた例
   日立メディコ事件・静岡県富士自動車学校事件・日本電子事件・芙蓉ビジネスサービス事件
 b)雇止めが認められなかった例
   新潟労災病院事件・丸子警報器事件

 �C期待保護(継続特約)タイプ
  雇用継続への合理的期待が、当初の契約締結時から生じていると認められる契約であるとされた
  もの
 <事案の特徴>
 a)更新回数は概して少なく、契約締結の経緯等が特殊な事案が多い。
 <代表的な裁判例>
 福岡大和倉庫事件(福岡地裁 平2.12.12)
  「期間の定めのない雇用契約であると解することはできないものの、その期間の定めは一応のものであって、単に期間が満了したという理由だけで雇止めになるものではなく、双方に特段の支障がない限り雇用契約が更新されることを前提として協議され、確定されてきたものである」と判示したもの。
<雇止めの可否の判断>
当該契約に特殊な事情等の存在を理由として雇止めを認めないケースが多い。
 やむを得ない特殊な終了事由がない限り契約継続が期待され、結果として雇止めが認められたケースはわずかしかない。(雇止め「無効」)

また、これらの分類された4タイプのそれぞれにおける、雇止めの可否を判断するに当たっての法的構成と雇止めの可否の傾向は次のとおりです。

 (1)�@純粋有期契約タイプ・・・雇止めはその事実を確認的に通知するものに過ぎず、期間満了により当該有期契約は当然に終了するものとされている。
 (2)�A実質無期契約タイプ�B期待保護(反復更新)タイプ�C期待保護(継続特約)タイプ
   以下の3つのいずれかに基づいて雇止めの可否についての判断を行っており、解雇に関する法理が類推適用される場合には、ほとんどの裁判例において、期間の定めのない契約の下にある労働者の解雇の判断において判例上用いられている解雇権濫用法理が類推適用されている。
 
  a)解雇に関する法理の類推適用により
  <代表的な裁判例>
  東芝柳町工場事件(最高裁一小 昭49.7.22)
  「あたかも期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了させる意思のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示に当たる。そうである以上、本件各雇止めの効力の判断に当たっては、その実質に鑑み、解雇に関する法理を類推すべきである。」と原判決を肯認している。

  b)信義則上の要請に照らして
  <代表的な裁判例>
  龍神タクシー事件(大阪高裁 平3.1.16)
  「その雇用期間についての実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、申請人において、右契約期間満了後も被申請人が申請人の雇用を継続するものと期待することに合理性を肯認することができるものというべきであり・・・(略)・・・従前の取扱いを変更して契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情が存しない限り、被申請人において、期間満了を理由として本件雇用契約の更新を拒絶することは、信義則に照らし許されないものと解するのが相当である」としている。

  c)「更新拒絶権の濫用」という枠組みにより
  <代表的な裁判例>
  ダイフク事件(名古屋地裁 平7.3.24)
  「本件労働契約は、・・・(略)・・・実質的には期間の定めのない雇用契約と異ならない状態で存続していたものというべきである。それ故、被告から、解雇の意思表示がなされた場合はもとより、単に更新拒絶(の意思表示)がなされた場合においても、少なくとも解雇に関する法理が準用され、解雇において解雇事由及び解雇権の濫用の有無が検討されるのと同様に、更新拒絶における正当事由及び更新拒絶権の濫用の有無が検討されなければならないというべきである。」としている。

 このように純粋有期労働契約タイプ以外の3タイプについて、結果としての雇止めの可否の判断
は前述したように一定の差異がみられ、雇止めが認められたケースも認められなかったケースもあり
ますが、雇止めの判断に当たっての法的構成(解雇権濫用法理の類推適用?)は共通しています。

以上の通り、有期労働契約の雇止めに関して裁判所は、個々の事案ごとに判断要素に係る状況等が異なるため、それぞれの状況等を勘案して総合的に判断することとなり、必ずしも一様とはいえない判断をしています。
�@�A�Cのタイプはある程度その結果を予想することは可能であるが、�B期待保護(反復更新)のタイプは事案・内容により雇止めの有効・無効の判断が分かれる為、その結果を予想することは容易ではありません。実務上トラブルになるケースの多くは、この�B期待保護(反復更新)タイプと言えます。
そこで、�B期待保護(反復更新)タイプの場合において、雇止めを有効と認められるためには、次の5つの要件を満たすことが重要です。    
 �@採用時の選考基準は正社員と比較して簡易及び緩やかなものであること。
 �A補助的な業務に従事させること。
 �B短期の雇用を前提とすること。
 �C配置転換・人事異動を行わないこと。
 �D更新基準を規定しておくこと。
但し、これら全ての要件を満たした場合であっても、雇止めの有効・無効の判断は個々の状況を勘案して総合的に判断されるため、確実とは言えません。
すなわち有期労働契約の雇止めに関するトラブルを未然に防ぐ絶対的な方法を示すことは困難と言えますが、強いていえば以下の手段が有効であると思われます。
 �@予め契約期間の上限を定めたうえで、一定期間ごと契約を更新すること。(予定する上限期間の満了時に契約は終了する) (例)最長5年で1年ごとに契約更新
 �A今回が最後の更新で、次回の更新を行わない場合は、最後の契約更新時に、「不更新(条項)特約」
(今回の更新で契約は終了し次回の更新を行わないとする旨の特約)を付けて契約を更新すること。
  不更新条項を有効とする最近の裁判例としては、「不更新条項という特約を無効とする根拠もないため、有期労働契約の雇止めは有効である」と判示した近畿コカ・コーラボトリング事件 (平17.1.13大阪地裁判決)があります。

以上のことから、有期労働契約の雇止めを有効とするには、有期労働契約社員規程の整備及びきちんとした契約更新手続を講ずることが重要であることを理解頂けたと思います。