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労働基準監督署の是正勧告の効力

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労働基準監督官は、労働基準法及び関係諸法令を施行するため、日常活動の一環として法適用事業場に対する監督・指導を実施し、関係諸法令に違反する事実を認めた場合に、使用者に対し違反事実を指摘した是正勧告書を交付します。

この是正勧告書には、どのような法的効力があるのでしょうか?

【裁判例】
札幌東労働基準監督官(共永交通)事件 (札幌地裁 平2.11.6)

被告(札幌東労働基準監督官)は、原告(共永交通(株))に対し、平成元年3月20日付け是正勧告書によって、原告が法定の除外事由がないにも拘わらず従業員(タクシー乗務員)である訴外大内好幸らの2月分の賃金について、1回の客待ち時間が15分を超える事を理由として、超過時間に相当する賃金を支払っていないのは労働基準法24条に違反するとして是正勧告をなした。これに対し、原告が是正勧告の取消を求めたが、却下された事件。

1.労働基準監督官の発する是正勧告というのは、一般に労働基準監督行政を実施した際に発見した法違反に対する行政指導上の措置に止まるもので、何らの法的効果をも生ずるものではないと解されている。
 すなわち、是正勧告は、これにより法違反の状態を当然に変更するものではなく、また、勧告を遵守しない使用者に対し、罰則を科するとか、その他これの遵守を強制する制度も設けられておらず、あくまで、勧告を受けた使用者が自主的に勧告に従った是正をするのを期待するものに過ぎない。使用者は、勧告に従った是正をしなかったとしても、その法的地位に何らの影響も受けないのである。
 なお、原告主張の本件是正勧告の内容からして、本件是正勧告も右の意味での是正勧告といえる。
 ところで、行政事件訴訟法3条2項の抗告訴訟の対象たる処分とは、当該措置がそれ自体において直接の法的効果を生ずる行為、すなわち、直接に国民の権利自由に対する侵害の可能性のある行為に限られると解される。したがって、何らの法的効果も生じない本件是正勧告が抗告訴訟の対象とならないのは明らかである。
2.この点について、原告は是正勧告に従わない場合必然的に刑事処分に移行する等の不利益を被り、その他是正勧告を取り消させなければ救済をはかれないと主張する。
(1)しかしながら、労働基準監督官が検察官に事件を送致するのは、使用者が是正勧告に従わなかったという事実に基づくのではなく、使用者に労働基準法違反が存するという嫌疑に基づくのである。また、労働基準法違反の事実の態様、労働基準監督官の抱く嫌疑の程度によっては、是正勧告を発せずに直ちに検察官に事件を送致することもあれば、是正勧告を発しても事件を検察官に送致しないこともある。さらに、送致された事件が当然に起訴されるわけでもない。
 以上のように是正勧告と刑事処分に伴う不利益とを法律上結び付けることができない以上、原告の主張を採用することはできない。

 以上の通り、是正勧告は何らの法的効果もありません。また行政処分にも該当しないため、勧告内容に不満があっても、事業主としては行政不服審査法や行政事件訴訟法により争うことはできないといえます。