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「電通事件」 最高裁第2小 H12.3.24、労判779-13

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「労働者(当時24歳)は90年4月に電通に入社。ラジオ局に配属され企画立案などの業務に携わっていたが、長時間残業・深夜勤務・休日出勤などの過重労働が続き、うつ病になって91年8月、自宅で自殺した。両親が93年に東京地裁に提訴。一審(東京地裁)・二審(東京高裁)とも会社側の責任を認めたが、二審では両親にも落ち度があったとして賠償額を3割減額した。最高裁では『会社側には長時間労働と健康状態の悪化を認識しながら負担軽減措置(安全配慮義務)を取らなかった過失がある』として、東京高裁に審理のやり直しを命じた。東京高裁では、平成12年6月に次のような和解が成立した。(1)会社は遺族(両親)に謝罪するとともに、社内に再発防止策を徹底する、(2)会社は一審判決が命じた賠償額(1億2600万円)に遅延損害金を加算した合計1億6800万円を遺族に支払う」ことで合意した。

〜抜粋〜
「労働者が労働日の長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである。労働基準法は、労働時間に関する制限を定め、労働安全衛生法65条の3は、作業の内容等を特に限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めるべき旨を定めているが、それは、右のような危険が発生するのを防止することをも目的とするものと解される。これらのことからすれば、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解すのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。」

「平成3年3月ころには、Aのした残業時間の申告が実情より相当に少ないものであり、Aが業務遂行のために徹夜まですることもある状態にあることを認識しており、(上司の)Sは、同年7月ころには、Aの健康状態が悪化していることに気付いていたのである。それにもかかわらず、(上司の)T及びSは、同年3月ころにTの指摘を受けたSが、Aに対し、業務は所定の期限までに遂行すべきことを前提として、帰宅してきちんと睡眠を取り、それで業務が終わらないのであれば翌朝早く出勤して行うようになどと指導したのみで、Aの業務の量等を適切に調整するための措置と採ることはなく、かえって、同年7月以降は、Aの業務負担は従前よりも増加することとなった。その結果、Aは、心身共に疲労こんぱいした状態になり、それが誘因となって、遅くとも同年8月上旬ころにはうつ病にり患し、同月27日、うつ病によるうつ状態が深まって、衝動的、突発的に自殺するに至ったというのである。
原審は、右過程に加えて、うつ病の発症等に関する前記の知見を考慮し、Aの業務の遂行とそのうつ病り患による自殺との間には相当因果関係があるとした上、Aの上司であるT及びSには、Aが恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかったことにつき過失があるとして、一審被告の民法715条に基づく損害賠償責任を肯定したものであって、その判断は正当として是認することができる。」
(「電通事件」 最高裁第2小 H12.3.24、労判779-13)

 

では、労働者の過労死や過労自殺を未然に防ぐ為に、また安全配慮義務違反を問われない為に使用者はどのような措置をとるべきでしょうか。まず、労働安全衛生法(第66条1〜3項、法第120条)に「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」とあり、義務違反には50万円以下の罰金が科せられています。一方、労働者にも健康診断を受ける義務はありますが、罰則は設けられていません。仮に従業員が健康診断を拒否し、そのまま放置して過労死等が起きたとしても、使用者は安全配慮義務違反が問われます。使用者の義務として、受診拒否をする従業員には、受診勧告をしなくてはなりません。再三の勧告にかかわらず受診命令に従わない時には、懲戒処分等の措置を講じることは可能です。