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重要労働判例特集

ゴムノイナキ事件(大阪高裁:H17.12.01)

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 本件は、工業用ゴム製品・合成樹脂製品の販売等を業とする会社の従業員として、生産管理および納期のデリバリーを担当していた控訴人(従業員)が、平成13年4月から平成14年7月までの大阪営業所勤務当時、連日午後10時ないし翌朝午前4時頃までの平日の所定労働時間外勤務や休日の勤務(超過勤務)に対する賃金が未払いであると主張して、給与規定に基づく超過勤務手当532万9840円およびこれと同額の労基法114条に基づく付加金の各支払い、ならびに遅延損害金の支払いを求めた事案である。

 大阪営業所の始業時刻は午前8時45分、就業時刻は午後5時30分であり、週休2日制がとられ、毎週土曜日および日曜日が休日であるが、タイムカード等を用いた出退勤管理は行われていなかった。控訴人は、平成13年4月に同営業所で勤務するようになった当初、午後11時3分発の最終バスに乗車できない場合には、被控訴人に「車両一時借用願」を提出して、会社の自動車に乗車していたが、同年10月1日からは、会社から毎日社有車を借用するようになった。

 被控訴人の給与規定では、超過勤務手当ついては、事前に所定時間内に「休日出勤・残業許可願」を所属長に提出し、許可を得なければないないと定めていたが、大阪営業所における残業は、多くの場合は、その日に行わなければならない業務が就業時刻までに終了しないため、やむなく残業せざるを得ないという性質のものであり、従業員の作業のやり方等によって、残業の有無や時間が大きく左右されることになっていた。

 一審判決は、平日について概ね午後7時30分までの超過勤務を認定し、超過勤務手当155万9550円およびこれに対する付帯請求ならびに付加金131万8125円の支払いを命じる限度で認容したが、これに対して控訴人(労働者)は、一審判決を自己の請求全部認容に変更することを求めて控訴した。

 本件二審判決は、休日勤務、付加金および消滅時効については、一審判決と同様に判断したが、平日については午後9時(プラス1時間30分)までの超過勤務を認定し、この部分について一審判決を変更した。

 判決は、控訴人労働者の超過勤務について、「控訴人の超過勤務自体、明示の職務命令に基づくものではなく、控訴人の作業のやり方等によって、残業の有無や時間が大きく左右されることからすれば、退社時刻から直ちに超過勤務時間が算出できるものでもない」とした。他方、出退勤管理をしていなかったのは、専ら被控訴人会社の責任によるもので、これをもって控訴人(労働者)に不利益に扱うべきではないし、被控訴人自身、休日出勤・残業許可願を提出せずに残業している従業員の存在を把握しながら、これを放置していたことがうかがわれることなどからすると、「具体的な就業時刻や従事した勤務の内容が明らかではないことをもって、時間外労働の立証が全くされていないとして扱うのは相当ではなない」とし、提出された全証拠から総合判断して、ある程度概括的に時間外労働時間を推認するほかないとして、一審よりも長く時間外労働を認定された例である。
 二審認容額 未払残業代272万円(+117万円)、付加金230万円(+100万円)

※労働時間の把握義務は会社にあり、会社が反証できない場合は労働者が提出した資料をもとに推認するとの判断
 会社としては、労働時間について、何らかの資料を準備しておかないと不利になるのでご注意下さい(藤本)