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重要労働判例特集

ワークフロンティア事件 東京地裁 平24.9.4判決〔控訴〕 

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事件の概要(固定割増賃金明記の労働条件通知書、割増賃金放棄確認書の効力)

平成20年6月12日 品川監督署の是正勧告を受ける

平成20年9月8日 K社労士が割増賃金の支給、就業規則の改定等に関する説明会を行う

第1確認書に署名捺印する

「20年2月1日~5月31日までの未払割増賃金について、自由な意思に基づき了承し、当該未払割増賃金を受領したことを確認する旨」

平成20年9月8日 第2確認書に署名捺印する

「20年6月1日~7月31日までの未払割増賃金を受領したこと」

及び「今回受領した割増賃金以外に貴社に対する賃金債権はありません」

平成20年8月1日~21年1月1日にかけて、労働条件通知書に署名した

基本給の項目に25万円~33万円の金額と「※時間外労働45時間分の固定割増賃金○○円を含む」最下段には「上記の労働条件に同意します。」

平成21年1月1日施行の新賃金規定には「管理監督者以外の従業員の基本給には、時間外労働等に対する一定の割増賃金を固定割増賃金として一部含ませることがある」と規定された。しかし、平成20年8月、固定割増賃金制度導入後も、固定割増賃金額を超える超過割増賃金の清算がされていなかった。

 

裁判所の判断

【1】清算確認書の効力 

①原告X1ら3名は、平成20年7月分以前の未払割増賃金に関する第1・第2 確認書の提出(署名捺印あり)によって、被告Y社に対し、20年7月分以前の割増賃金につき清算を確認するとともに、仮に未払いの割増賃金債権が存在するとしても当該債権を放棄する旨の意思を表示したものと解され、上記意思表示は、それが同人らの自由な意思によるものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存するといえるから、割増賃金債権放棄の意思表示として有効である。

②あらかじめ将来の割増賃金について労働者がこれを放棄することは労基法37条に違反し許されないが、すでに発生済みの割増賃金を労働者がその自由意思に基づき放棄することは何ら労基法には反しない。

 

【2】固定割増賃金に関する合意の有効性 

①基本給の中に割増賃金を含める旨の合意について、その基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意され、労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその額を支払うことが合意されている場合、当該合意は労基法に反するものではなく有効であると解されるところ、旧賃金規程は、いわば労基法に則した割増賃金の定めを置いているにすぎないとみられるから、労基法上有効とされる固定割増賃金に関する合意が、旧賃金規程に反し無効とされることはないと解するのが相当である。

Y社と原告Xらとの間においては、各労働条件通知書記載のとおり、基本給の中に固定割増賃金を含める旨の個別合意が成立しており、かつ、それらの個別合意は有効であると解するのが相当である。

②署名をしなかった者についても、「当該労働条件通知書に記載された労働条件に異議を述べることなくY社に入社して就労し、記載されたとおりの賃金を受領していたものであるから、Y社とX3らとの間においても、当該労働条件通知書に記載された内容での合意が黙示的に成立したものと解するのが相当である」

③固定割増賃金を上回る差額を支払う意思がないから当該固定割増賃金に関する個別合意は無効であるとの主張に対して⇒問題点の指摘は正当と言える面もないではないが、その点は付加金において考慮すれば足りる。と退けた。

 

【3】割増賃金計算の除外賃金 

①基本給中の45時間分の固定割増賃金⇒除外賃金と認める。算定基礎賃金となるのは、固定割増賃金額を差し引いた残額(純基本給)となる。

②報償手当⇒新賃金規定には「割増賃金の意味を有する」と規定されているが、業績ないし功績に対する報酬としての性質を有するから割増賃金と見ることはできない。

③管理職手当・役職手当⇒「職責に応じて支給」されることから割増賃金と見ることはできない。

 

【コメント】 

(1)清算確認書が有効⇒社外の社労士に依頼し、説明会を開催したことが良かったのかな?労働者も錯誤等の主張はしていないです。

(2)書面(労働条件通知書)の存在が良かったのでしょうね?口頭による合意とは説得力(裁判官の心証)に相当な違いがあったのだと思います。

(3)超過割増賃金の差額清算をしていなくても定額残業代が認められた事例です。

差額清算実態が、今後の争点になりそうです。裁判所が重視するのかどうか?