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重要労働判例特集

ピーエムコンサルタント事件「年俸制と残業代」(大阪地裁H17.10.06)

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正社員として入社後、年俸制の契約社員となった労働者が時間外勤務手当及び退職金を請求した事件。(退職金請求は省略)

会社は、主に官公庁の土木設計などを行う建設コンサルタント会社、従業員は約60名。

労働者は、平成3年4月正社員として入社したが、平成13年4月からは契約期間1年とする年俸制の契約社員となり2回更新後、平成16年3月31日に契約満了で退職した。
勤務時間については、勤務時間整理簿を上司が確認(会社の黙示の時間外勤務命令を認める)しており、会社も争っていない。

会社の主な主張は、現場手当を超える残業は労働者の裁量で行っていたものであり、残業手当は現場手当として支払済みであり、労働者とも合意していた。

給与規定によれば、年俸の体系は、基本年俸と退職引当金により構成され、基本年俸は基本額(給)と諸手当(家族手当、住宅手当、資格手当、時間外手当、その他)に区分されているが、契約社員労働契約書には、「基本年俸には住宅手当・家族手当・資格手当・現場手当(残業手当)を含む」旨の記載があり、会社主張によれば、現場手当の名称で残業手当分として月額一律2万5000円が支給されていた。

しかし、給与規程には現場手当に関する規定はなく、給与明細書にも基本給の名称で支払われ、現場手当の名称で時間外勤務手当が支払われたことはなかった。

時間外勤務手当額については、会社の給与規定には、現場手当に関する規定はなく、労働者に対してもすべて基本給の名目で金員が支払われており現場手当の名目で支払われた金員はないこと(内訳の明示が無かった)、残業手当の趣旨で支払われていたとされる月額2万5000円が、(会社主張)月50時間の残業手当に相当するものであるとすると、1時間当たりの残業手当額は500円となり、現実の残業手当に見合う額とは考えがたく、基本給の額とも対応しないこと、年俸の中に現場手当(月額2万5000円)が含まれている旨の書面があるが、いずれも労働者に示されていないことなどを理由に、「XY間の契約社員労働契約書には、基本年俸には現場手当(残業手当)を含むものとするとの条項があるが、労働者に対して仮に現場手当の名目で残業手当が支払われていたとしても、その額は明らかではないといわざるを得ず、契約書の条項をもって、労働者に対する年俸の中に残業手当が合まれているということはできない」として、会社に対し、請求どおりの時間外勤務手当額の支払いを命じた。

 時間外勤務手当(約318万円)及び同額の付加金の支払を認めた。

 ■参考判例

 創栄コンサルタント事件(大阪地裁H14.05.17、大阪高裁H14.11.26、最二小決H15.05.30)
年俸制賃金において、基本給に時間外割増賃金などを含むとの合意があったとしても、基本給部分と割増賃金部分の区別が明確でない年俸賃金の定め方は、労基法37条1項に違反するとされた例

 ※明確な区分・区別及び具体的な金額を賃金規程及び給与明細で明示し、併せて個別の労働契約書で合意することが必要、且つ、重要です。(藤本)